皮膚疾患と治療方法
アトピー性皮膚炎
当院ではまず、EBM(Evidence-based Medicine:根拠のある医療)に基づき、治療方針をたてていきます。
すなわち、作用・副作用が医学的に明瞭なもの(タクロリムスなどの免疫抑制剤、非ステロイド、ステロイド、抗アレルギー薬など)を皮疹の状況(部位、程度、将来の変化の予想)に応じ適切に使用しながら、できうる限り、それらの有益性を多く与え、不利益面が最小限となるよう配慮し、その一方でまだ明白なEBMに基づくと判断できないが、経験的に有益であると判断される治療(例えば保湿剤など)を併用しつつ、個々の患者さんのQOL(Quality of life:生活の質)を高めるよう努力しています。
最近ではアトピー性皮膚炎で増加しているTh2細胞が産生するIL-4/13を抑制する注射薬が開発され著効している例が多いです。当院でも多くの患者さんがこの治療によってQOLが大きく改善されています。
民間療法には、いまだ医学的根拠がないものがほとんどで、積極的におすすめできるものはありませんが、ご自身の経験上、非常に有益と感じたものがある方で、かつ、それを継続してよいのか迷っておられるような場合には、遠慮なくご相談下さい。
乾癬(かんせん)
皮膚表皮の細胞の角化異常(正常にあかになっておちていく過程の障害)が本質の疾患です。 病変が広範囲に及んだり、顔や首・手背などの露出部に出現する場合には、日常生活上あるいは精神的にも支障をきたすことが多いものですが、まず他人に関して感染性のないものであること、ほとんどの場合は内臓疾患との関連はないものであることを理解し、また身近な人に理解してもらいましょう。 当院での治療は、これまでどのような治療を受けておられたのか、又は治療を受けるのは初めてか、今後の治療変更による病状の変化はどのようであるか等を考慮した上で、 ①活性型ビタミンD3外用薬(数種類ありますが、部位により塗り分けを指示いたします) ②中波長紫外線照射(Narrow-Band UVB)、長波長紫外線照射(PUVA療法) ③重症例では免疫抑制剤(シクロスポリン)やレチノイド内服の併用 ④かゆみの強い場合や治療導入がほかの方法ではうまくいかない患者さんでは、一時的にステロイド外用剤をビタミンD3外用と併用し、徐々に①や②へ移行といった具合にCase by Caseで対応していきます。
現在、乾癬における皮膚科学的研究は、新しい免疫療法をはじめ、次々と期待のもてる新薬が開発されてきています。 乾癬においても様々な民間療法があるようですが、かえって悪化させたりすることのないよう、その選択にあたっては当院医師にご相談下さい。 |
Narrow-Band UVB照射について | 310~315nmの非常に限られた波長の中波長紫外線をあてることにより乾癬皮疹のコントロールをはかる治療で、米国では従来のPUVA療法と平行し、数年前より実施されてきました。 すべての患者さんにおいてPUVA療法より優る効果が出現するわけではありませんが、最近数年の日本での成績は非常に良好です。 これまでの治療でコントロールが困難であった方には非常に有望な手段と考えられます。 |
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ターゲット型エキシマライト(308nm) | ターゲット型エキシマライト(308nm)も開発され、より安全で強力な治療が可能となり、当院でも設置しています。 |
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
手掌・足底に小水疱や膿疱を生じ、ステロイド外用では繰り返し出没することの多い疾患です。
歯科金属アレルギーや慢性の扁桃腺炎などが誘発因子となる場合もあり、明らかにそれが疑われる場合は、金属パッチテストや扁桃誘発テストを行い、陽性の場合にはこれを除去するよう、他科との協力のもとにご指導いたします。
まず、この疾患も感染性はありません。日常生活上、感染性を気になさる必要はありません。
治療としては、活性型ビタミンD3や,ターゲット型エキシマライト、中波長紫外線Narrow-Band UBV照射療法、長波長紫外線照射療法(PUVA)を主体に、亀裂や痛み、痒みがひきにくい場合は対処的に他の手段を用いていきます。
根気強い治療が必要ですが、きちんと加療すれば必ず長く寛解期間が得られます。
皮膚癌・皮膚腫瘍・ほくろ
尋常性白斑
原因については現状でも自己免疫説、常在真菌類に対する過剰免疫、遺伝など議論は続いていますが確定しておりません。
治療では外用ステロイド、外用ビタミンD3,タクロリムス外用剤が汎用されております。
紫外線照射療法は現在でも白斑治療の中心でありますが、従来のように長波長紫外線に対して吸収率を高めるための外用剤を塗布してから照射するのではなく、直接に中波長紫外線(310ナノメーター付近)を照射するほうが効果的であることが判明し当院でも変更対応しております。また308ナノメーターのエキシマライトは限局型白斑に照射します。
また限局型で治療に反応が悪く白斑部位が間擦部でない場合にはスポット植皮術を大学病院に依頼しております。